食料自給率低下問題の本質

世間ではすっかり「食料自給率」という言葉が定着した。

これは食料自給率戦略広報推進事業として農水省が年間17億円かけて進めている事業の中で、

「食料自給率向上に向けた国民運動推進事業」の部分を電通に委託して、

6.5億円の補助金で「FOOD ACTION NIPPON」を展開している事によるところが大きいとみている。

 

そもそも、この「食料自給率」という概念に問題があるのではないか。使われている指標はカロリーベースと呼ばれ、供給熱量総合食料自給率と定義されている。計算式は

 

     1人1日当たり国産供給カロリー

=     ———————————————————-

      1人1日当たり供給カロリー

 

すなわち、

 

     (国産+輸出)供給カロリー  ÷  人口

=    ——————————————————————

   (国産+輸入-輸出)供給カロリー  ÷  人口

 

となり2007年度の数値を当てはめてみると、

 

    1,016kcal

= ——————————    = 40%

    2,551kcal

 

で40%を示している。しかし、ここで問題は分母の供給熱量であり、これは国民に対して供給される総熱量を指し、必要摂取熱量ではない。2006年厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると1人当たり平均摂取熱量は1891キロカロリーであり、この数値を用いると

 

    1,016kcal

= ———————————-       =     53%

    1,891kcal

 

と日本人の必要摂取カロリーに対しては50%を超える自給率がある。つまり、分母の約4分の1を占める700kcalのロス(つまり廃棄量や食べ残し)があるという事実が浮かび上がってくる。

 

さらに、この計算式では、他国から輸入できる食料が無くなれば、

    1,016kcal

= ———————————-       =     100%

    1,016kcal

となり、これからの貿易縮小時代には極めて100%に近くなるものの、我が国の食料自給力を明確に示すものではない事が明らかである。

 

私たちがが本当に知りたいのは、「いざ」という時代を迎えて、

自分たちが食べられるだけの食料を自給出来る力は、どの程度かという事だろうと思う。

 

そもそも、現在の日本の農業は石油依存で成り立っているが、」

我が国の原子力を除いたエネルギーは100%に近く輸入である。

その9割は中東から。中東で何かが起これば、一気に飢餓という事態を想定せざるを得ない。

 

また、家畜飼料自給率は26%とされているが、世界中で穀物が不足する時代に我が国の家畜を養うために安価な飼料を輸入し続ける事は長くは続かないと考えられる。

 

さらに、化学肥料の原料となっているリン鉱石(100%輸入)をめぐり、輸出元である中国、アメリカはすでに自国の農業の保護に努める政策を発表している。

http://news.livedoor.com/article/detail/3679274/

 

ちなみに、秋田県内の食料自給率を見ると、

米ではなんと670%、大豆164%、などで全体では174%にもなると言う。

しかし、前述のエネルギー依存度を加味した場合、これらの数字は何の意味を持つのか。

 

長年続いた戦後農業政策において、小規模自給農家は蚊帳の外に追い出されてきた。

真の自給力は自分たちが自分たちで食べるものをつくれる能力にある。

つまりこれは、都市部では限りなくゼロに等しい。

 

食料を他国から輸入に頼るという事は、

その国の農村とそこに暮らす農民の生命と僕らは無縁じゃないってことだ。

 

エネルギーを輸入して、世界に誇れる工業技術で機械部品を製造して、

じゃあ、つくる人がいなくなった食べ物は他国から輸入すれば良いじゃないか

 

という金融グローバリゼーションの波のもとで、世界は飢餓を誘発している。

 

このことが本質的な食料自給力の問題ではなかろうか。